推薦図書

ドイツ語専攻の先生たち一推しの図書です。大学生だから本を読みたいけど、何がいいかわからないという人はぜひチェックしてみてください。

 

✴︎『ことばと文化』鈴木孝夫

言葉の文化社会性をわかりやすく取り上げた日本を代表する名著。英語にも翻訳されて国外でも読まれている。

✴︎『甘えの構造』土居健郎

日本人の精神構造を分析した名著。「日本人は~~ドイツ人は~~」などと比較して話をするのであれば、この本を読んでおく必要がある。

✴︎『気候の変化が言葉をかえた-言語年代学によるアプローチ』鈴木秀夫  

気候学者ならではのスケールの大きな文明論。世界的な言語分布と気候変動を説明した、独創的研究。古本を購入しても読んでもらいたい一冊。鈴木は『風土の構造』など自然に関する比較文化論的著作を残している。

✴︎『トニオ・クレーガー』トーマス・マン

ドイツを代表する作家トーマス・マンの短編小説。この芸術作品が描いているところは、各自の判断にゆだねる。北ドイツ、リューベックを訪れる前にぜひ読んでおいてほしい。

✴︎ „Tschick“ von Wolfgang Herrendorf 邦題『14歳、僕らの疾走:マイクとチック』

大人も読める現代のドイツ若者向け小説。全く違う環境で育った二人の男子中学生の特別な友情を描いている。一人は裕福だが不幸な家族出身で、もう一人はロシアから移住してきた。いまの時代の言葉で書かれたワクワクする物語(ドイツで映画化され、日本語の訳本もある)[Ein moderner deutscher Jugendroman, der auch von Erwachsenen gelesen werden kann. Er handelt von einer besonderen Freundschaft zwischen zwei Schülern aus sehr unterschiedlichen Verhältnissen. Ein Junge kommt aus einer reichen aber unglücklichen Familie und der andere Junge ist ein Spätaussiedler aus Russland. Eine schöne spannende Geschichte in moderner deutscher Sprache. (Es gibt auch einen Film und eine japanische Übersetzung.) ]

✴︎ „Scherbenpark“ von Alina Bronsky

ロシアから移住してきた17歳の女の子の物語。彼女はドイツ語もロシア語も得意で、学校の成績も良く、母親と小さい兄弟たちの面倒も見ている。ただ、なぜ他の移住者家族の子どもたちがドイツの社会に溶け込めないのか理解できない(映画化しているが、日本語版はまだないかもしれない)[Ein Roman über ein siebzehnjähriges Mädchen aus einer Spätaussiedlerfamilie. Sie kann sehr gut deutsch und russisch, ist eine sehr gute Schülerin und kümmert sich um ihre Mutter und ihre kleinen Geschwister. Sie versteht nicht, warum sich andere Kinder aus eingewanderten Familien so schlecht in die deutsche Gesellschaft integrieren. (Es gibt auf jeden Fall einen Film, aber vielleicht keine japanische Version(?)).]

✴︎ „QualityLand“ von Mark-Uwe Kling 邦題『クオリティランド』

アルゴリズムとレビューが人生を支配する近未来のディストピアを描いた、笑えると同時に批判的でもある話。主人公は、ペーター・アルバイツローザー。彼はもともと機械セラピストだが、壊れた機械は廃棄処分と決められているので、仕事がない。だが、機械たちを廃棄したくないため、いまは生意気な高級タブレット、飛行恐怖症のドローン、そして原稿が書けないデジタル詩人と暮らしている。クオリティランドは、私たちのいまの世界とは似ていないが、近い将来このようになるかもしれない(日本語版、グラフィックノベル・シリーズがあり、近々HBOでもシリーズが配信される予定)[Eine lustige und kritische Dystopie über eine nicht all zu ferne Zukunft, in der Algorithmen und Bewertungen das Leben steuern. Im Mittelpunkt steht Peter Arbeitsloser, der eigentlich Maschinentherapeut ist, jetzt aber seinen Beruf nicht ausüben kann, weil kaputte Maschinen verschrottet werden müssen. Weil er aber die Maschinen nicht verschrotten möchte, wohnt er jetzt mit einem frechen QualityPad, einer Drohne mit Flugangst und einer E-Poetin mit Schreibblockade zusammen. Die Welt in QualityLand ist unserer Welt zwar nicht ähnlich, aber unsere Welt könnte in einigen Jahren so aussehen. (Es gibt auch eine japanische Version, eine Graphic-Novel-Reihe und bald eine Serie auf HBO.)]

✴︎ „Momo“ von Michael Ende 邦題『モモ』

この本はドイツ語学習者にも読みやすく、人生における重要なメッセージもいくつも含まれています![Das Buch ist für Deutschlernende leicht zu lesen und hat einige wichtige Botschaften für unser Leben!]
1年生を修了したら、ドイツ語の原本と日本語訳を並べて読めます。物語のはじめの方で、喧嘩している二人の間でモモがじっと話を聞いていると、だんだんと二人の気持ちが落ち着き、最後は仲直りするという場面が出てきます。小学生の時にこの本を読んで以来、モモのように話が聞ける人になりたいとずっと思い続けてきました。

✴︎ 『水晶 他三篇―石さまざま』シュティフター(岩波文庫)

ニーチェやトーマス・マンも高く評価したと言われるオーストリアの国民的作家シュティフターの短編集。緻密な自然描写は時に退屈と揶揄されるが、大自然の驚異と素朴に生きる人間との対比は大きな感動を生む。

✴︎ 『チリの地震 クライスト短篇集 』クライスト(河出文庫)

近代文学の先駆者と言われる天才クライストの短編集。古典主義からロマン主義への流れを理解する上では不可欠な作家の一人。

✴︎ 『デミアン』ヘッセ(新潮文庫)

『車輪の下』などの初期作品が有名だが、中期以降の作品が断然おすすめ。ドイツのギムナジウムを舞台にした作品で、萩尾望都の名作漫画『トーマの心臓』のきっかけになった作品とも言われている。金子修介監督の映画『1999年の夏休み』はこの漫画を翻案にしており、作中でもその一節が引用されている。

✴︎ 『ホフマン短編集』ETAホフマン(岩波文庫)

ドイツ後期ロマン主義を代表する幻想文学作家ETAホフマンの短編集。彼の不思議な作品の数々は、数多くのバレエやオペラの楽曲の基となっている。

✴︎ 『善悪の彼岸』ニーチェ(岩波文庫)

「神は死んだ」で有名なドイツを代表する思想家の一人。ドイツ語を始めたからには一度はニーチェに挑みたい。難解この上ないが、読み終えた後、何かが変化するのを感じるはずだ。

✴︎ 『ユダヤ人のブナの木』ドロステ・ヒュルスホフ(岩波文庫)

ドイツ最高の女流詩人ドロステ=ヒュルスホフによる犯罪小説。その人間心理に迫る作風は唯一無二である。

✴︎ 『カフカ短篇集』カフカ(岩波文庫)

20世紀を代表するプラハ出身のドイツ語散文作家カフカの短編集。『変身』が有名だが、人間の実存に迫るその作品は、いずれも読めば読むほどに悩ましさが増す。